庭木

造園に用いられる植物は、その形状と用途からおおまかに樹木笹類下草類芝類などに分けられます。

樹木

樹木とは冬季に樹幹や枝が枯死せず、長年にわたって成長し続ける植物をいいます。
樹木の分け方は様々で、植物分類学上では、裸子植物・被子植物に分けられ、更に綱・目・科・属・種・変種・品種に分けられますが、造園においては、生態・性質・用途・観賞上の特徴などから下記のように分けられます。

葉の性状による分類

常緑樹
冬季になってもすべて落葉せず、年間を通じて葉を付ける樹木。(落葉しないのではなく、新しい葉が伸びるにつれて古い葉は次第に落ちる。) 常緑樹は一般的に、主木としたり敷地の境界に沿って植栽され背景としたり、隣地との目隠しなどとして用いられる。
マツ,マキ,モッコク,カシ,ヤマモモ,チャボヒバ,カイズカイブキ,スギなど。
落葉樹
春に萌芽して出た新葉が1年未満で落葉し、次の葉が伸長するまでまったく葉を付けない状態になる樹木。暑い季節の緑陰としたり、新緑・花・紅葉・落葉といった四季の変化を引き立たせる。
ドウダンツツジ,ウメ,カエデ,サクラ,サルスベリ,イチョウ,カシワ,ケヤキなど。

葉の形態による分類

針葉樹
葉の形状が針状または鱗状で、大部分が常緑樹。裸子植物で松柏類に属する樹木が多い。耐陰性に劣る種類が多いので、陰地の植栽にはあまり向かない。
マツ,マキ,スギ,カイズカイブキ,ヒバ,ヒノキ,キャラボク,コノデガシワ,ハイビャクシンなど。
広葉樹
葉の形状が平たくて幅のある樹木。(マキ類やイチョウは広葉をもつが、裸子植物のため植物学上は針葉樹に分類されている)
カシ,モチノキ,モッコク,ウメ,アオキ,シャクナゲ,ツツジ,ナンテンなど。

樹高と用途から分類

高木 低木
高木
一般的に植栽時の樹高が3m以上のもので、植栽の上層空間を占める樹木。喬木きょうぼくともいう。主幹がはっきりしており、一般に庭の主木として、緑陰樹や、あるいは周辺部の目隠し用などに使われます。
アカマツ,クロマツ,スギ,ヒノキ,イヌマキ,モッコク,モチノキ,シラカシ,ヤマモモ,ケヤキ,イチョウ,サクラなど。
中木
一般的に植栽時の樹高が2m前後のもので、植栽の中層空間を占める樹木。高木の前または高木との間に用いる。植物的形態は高木に準ずる。添植、寄植、列植などに用いられる。
ヒバ,イヌツゲ,ウバメガシ,サザンカ,サンゴジュ,ツバキ,ヒイラギ,ウメモドキなど。
低木
一般的に植栽時の樹高が1m以下のもので、植栽の下層空間を占める樹木。灌木かんぼくともいう。地際から多数分岐して成長し、樹幹と枝の区別が明確でないものが多い。高木の根締めや中木の前付けなどに用いる。
ツツジ,アオキ,シャクナゲ,キャラボク,ヒイラギナンテン,ハイビャクシンなど。

樹形

樹幹による仕立て名称

曲幹 株立ち 武者立ち 斜幹
単幹
地際から1本の樹幹が直上すること。
双幹
地際から2本の樹幹が立ち上がること。相生ともいう。
株立ち
地際や地中から数多くの枝や枝幹が立ち上がった形のこと。低木類は自然にこのような樹形をとるものが多い。
武者立ち
株立ちの一種で、地際から幹が3本以上の多幹になったもの。
直幹
主幹がまっ直ぐに伸びたものをいう。高木類が多くこの形になる。
曲幹
主幹が曲がって生長したものをいう。
斜幹
直幹・曲幹に対し、幹の傾斜したものをいう。
流枝(なげし)
形は単なる斜幹でなく一度傾斜し、つぎに水平に生長し、二度目に再び傾斜した形をいう。
懸崖(けんがい)
幹が根の位置より低く垂れる形で、崖地に生える松の形によくみられ、盆栽では多く仕立てられる。懸崖ほどには垂れないものを半懸崖という。

竹・笹類

竹林 笹

竹はイネ科の多年性の常緑植物で、耐陰性がある。茎は稈(かん)と呼ばれ、中空で年輪がない。一般的に筍(たけのこ)が成長した後、その皮がすぐ落ちるもの竹、稈を包んで残るものを笹と呼ぶ。
地下茎で繁殖する。地下茎が広く地中を横走して広い面積にわたって稈が発生するので、根止めの必要がある。

竹類クロチク,ナリヒダダケ,キッコウチク,シホウチク,モウソウチクなど
笹類クマザサ,チゴザサ,オカメザサなど

下草類

下草

一般的に草本類を主とし、しばしば笹類や低木類を含めて呼ぶことがあるが、園芸用植物は含まれない。多年草を主とし、年間を通じて葉・茎を残す常緑性のものと、冬季に地上部が枯れ、地下部のみで越冬する夏緑性のものがある。
花の美しいものが多く、四季の変化を表現したいときに用いると効果的である。

常緑多年草エビネ,オモト,ツワブキ,ユキノシタ,ヤブラン,リュウノヒゲなど
夏緑多年草アヤメ,フクジュソウ,ギボウシ,ユリ,リンドウなど
シダ植物クジャクシダ,ゼンマイ,トクサ,イワヒバ,クラマゴケなど

苔・芝類

地表を広くおおうことを目的として植栽される地被植物で、美観性の他に、土埃があがるのを防いだり、のり面や土砂の崩壊や流出を防ぐなど地表面を保護するなどの役割がある。

苔類

スギゴケ

半陰地で適湿な土壌を好み、乾燥を嫌う。

オオスギゴケ,コスギゴケ,スナゴケ,ハイゴケなど

芝類

芝

イネ科の多年性草本を主とする。1年を通じて生長する常緑性の芝(西洋芝)と、冬季に地上部が枯死する夏緑性のもの(日本芝)がある。
陽地で水はけのよい土壌を好む。

日本芝コウライ芝,ノシバ,ビロード芝など
西洋芝ベントグラス類,ブルーグラス類,フェスキュー類,ライグラス類など

その他

蔓植物

蔓植物

蔓植物とは直立せずに、他の物にからんでよじのぼったり、あるいは壁などに吸着して成長する植物のことである。
フジなどの木本性のものと、アサガオのような一年生草木と、カラスウリのような多年生草木とがあるが、一般に造園用として用いられる蔓植物は、木本もしくは多年生草木が多い。

庭木の特性

庭木が生育できるかどうかは、温度・湿度など気候や風土、その場所の日照や土壌条件などできまってきます。庭木を性質によって分類すると下記のように分けることができます。

陽樹と陰樹

陽樹
日当たりのよい場所でしか生育できない樹種、または日当たりのよい場所で生育良好な樹種。
陰樹
日陰または半日陰に於いて生育良好な樹種、または日陰でも生育可能な樹種。

樹木の耐性による分類

耐湿樹
湿潤な地に耐える樹種で、中には湿地を好む樹種もある。
耐乾樹
乾燥した地に耐えて生育する樹種で、中には湿地にも強い樹もある。
耐火樹
火気に耐える樹種で、枝葉や樹幹が燃焼しても早期に発芽し、樹勢が回復するもの。枝葉が密生し、葉が多肉質で大きく、水分の多いものがよい。防火用樹として用いられる。
耐潮樹
海岸に近い地域では潮風に耐えられる樹種がが向いている。
耐煙樹(耐公害樹)
工場の排煙や自動車の排ガスなどの大気汚染に対し、比較的強い樹種。
防風用樹
深根性で、枝折れなど風害のすくないもの。
痩せ地に耐える樹
土壌中にある植物の養分となる有機質に乏しい土地でも生育可能な樹種。

発育性

生長の早い樹種、遅い樹種
早期に大きく生育させたい場合、生長の早い樹種が向いていて、剪定などの管理をできるだけ少なくし、植栽時から樹形があまり変化しないようにしたい場合、生長の遅い樹種が向いている。
萌芽力の強い樹種、弱い樹種
萌芽力とは、樹木の芽が生える強さをいい、枝を伐り払っても活発に芽吹く樹種と、枝を途中で切ってしまうとそこから芽吹くことなく枝枯れしてしまう樹種。

主な庭木の特性

【中高木】
区 分樹 種陰 陽乾 湿萌 芽生 長耐 潮耐 火耐 煙備 考
常緑針葉樹アカマツ極陽耐乾×××
イヌマキ耐湿
カイズカイブキ好湿
クロマツ極陽耐乾×
ゴヨウマツ××
スギ好湿×××
チャボヒバ
ラカンマキ×
常緑広葉樹アラカシ湿
イヌツゲ湿
ウバメガシ耐乾×
カナメモチ好湿
キンモクセイ湿
クロガネモチ好湿
ゲッケイジュ
サザンカ好湿
サンゴジュ
ツバキ
シラカシ
ヒイラギ極陰耐湿
モチノキ耐湿
モッコク
ヤマモモ好湿
ワビスケ
 
落葉広葉樹イロハモミジ湿××
ウメ好湿×
ケヤキ好湿
サクラ
サルスベリ好湿
シダレサクラ×
シラカバ極陽好湿××
ハナミズキ×

【低木類】
区 分樹 種陰 陽乾 湿萌 芽生 長耐 潮耐 火耐 煙備 考
針葉樹タマイブキ×
ハイビャクシン×
常緑樹アオキ極陰好湿
オオムラサキツツジ
サツキツツジ×
シャクナゲ××
センリョウ耐湿×
ナンテン好湿
ヒイラギナンテン極陰好湿
マサキ
マンリョウ好湿
ヤツデ極陰好湿
 
落葉樹アジサイ好湿
ウメモドキ好湿×
ドウダンツツジ耐湿
ボケ
ロウバイ湿
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