コケとシダ

コケとシダ

コケとシダ

植物は花を咲かせ種子をつくってふえる種子植物(さらに種子植物は花のつくりの違いから大きく被子植物裸子植物に分類される)と、胞子で繁殖する胞子植物に分けられます。
胞子植物にはシダ植物コケ植物藻類そうるい菌類きんるいなどがあります。
華やかな花を咲かさない、どちらかと言えば陰湿な感じが強いコケ類やシダ類を造園に用いるのは、自然の美を大切にする日本庭園の特徴の一つでもあります。

コケ植物

庭園では美観性の他に、土埃があがるのを防いだり、のり面や土砂の崩壊や流出を防ぐなど地表面を保護したり、気温の上昇防止などの役割がある 地被植物として芝を植栽することがありますが、コケ類が利用されるのは日本庭園独特の様式です。
一般的な高麗芝やノシバなどの芝は冬枯れしますが、コケ類は年間を通して美しい『緑のじゅうたん』を観賞できるのも日本庭園に苔が愛される理由の一つです。

一般的に普通にみられるコケ植物の本体は配偶体とよばれ、この配偶体の上に胞子体とよばれる胞子をつくる器官が形成されます。コケ植物は胞子体をはじめ様々な形態の違いにより、蘚類せんるい苔類たいるい,ツノゴケ類の大きく 3っの群に分けられ、これらを総称して蘚苔類ということもあります。
(地面,岩,樹幹を覆う小さな植物には、モウセンゴケやクラマゴケ,ウメノキゴケなどのように「●●ごけ」という和名がつくものがありますが、これらの中には蘚苔類ではなく、小さな種子植物やシダ植物,地衣類(菌類と藻類の共生生物)であるものもある。)
この中で造園や園芸で利用されるのはほとんど蘚類です。(苔類は葉・茎・根の区別が明確でなく地面にはりつくように繁殖するので造園では用いられない。)

コケ植物は葉緑体をもち光合成をする植物ですが、種子植物やシダ植物とは違い、体の本体に維管束いかんそくと言う繊維管(根から水や養分を取り込む器官)はなく、根の様に見える部分は、「仮根かこん」と呼ばれ、ほとんど水分を吸い上げる力はなく、体を支えているのみの機能です。
コケ類は水蒸気になって空気中にある水分を自分の体の表面全体から吸収して、光合成で自分の体に必要とする養分をつくりあげています。
コケ類の葉は、空気中からの水分を吸収しやすいように、きわめて薄いつくり(多くは一層の細胞)になっています。したがって、全体に直射日光に当たるとか、空気が乾燥してくると、体の中から水分が体外に逃げ出しやすいことにもなります。このため多くのコケ類は半日陰から日陰地を好むのです。

庭園でコケの生育環境を整えるのには、そのコケの性質にあった日照や湿度,土壌を整えることが大切です。
種類によって乾燥を好むもの、湿性のもの、日向向きのもの、日陰に適するものなど、苔によってかなり性質の違いがあり、造園で利用するときはこの性質を理解する必要があります。

コツボゴケ コケ類の生え方には大きくいって三つの型があります。
第一は直立型と呼ばれるもので、地上に立ち上がって生えます。スギゴケの仲間や、トラノオゴケ,ヒノキゴケ,ホソバシラガゴケなどがこのような生え方をします。
第二は地表面を横にはって生えるもので、ハイゴケ,ヒツジゴケその他です。この型のものは横にはいながら枝分かれをたくさんして、広がっていきます。
(コケ類にはコツボゴケのように1本の植物体に直立茎と匍匐茎を併せ持つものもある。)
第三は着生型で、岩とか木の幹などにくっついて生えます。岩とか木の幹の上を横にはって、これらにはばりつくものと、岩とか木の幹から垂れ下がったり、立ち上がったりするものがあります。
庭の地被植物として利用するコケ類は、この直立型と横伏型のものが主で、着生型のものは地被植物としてはあまり利用できません。庭石などにくっつける場合にはこの着生型の種類を利用します。

コケ植物(bryophyte)の分類

蘚類(moss)
蘚類 茎と葉の区別が比較的しっかりとある茎葉体けいようたいを形成するコケ植物。
茎が直立するタイプと、茎が匍匐ほふくするタイプがあります。
スギゴケ,ミズゴケ,ウロコゴケ,ヒカリゴケ,ハイゴケなど。
苔類(liverwort)
苔類 茎と葉の区別がなく、平らな体になる葉状体ようじょうたいを形成するコケ植物。茎葉体のものもある。茎葉体の場合、蘚類との区別点は、苔類のものは、葉が大きく裂け、腹面側と背面側の裂片が区別できること、中肋がないことである。ただし、例外も多く、区別が難しい場合もある。
苔類の代表の一つとして有名なゼニゴケは園芸家の間では嫌われる存在なので、ゼニゴケが芽生えはじめたら早期に取り除き駆除します。
ゼニゴケ,ジャゴケ,ウキゴケ,ウロコゴケなど。
ツノゴケ類(hornwort)
本体(配偶体)は葉状体で、胞子体はツノ状の形を特徴としている。
現在知られる種数は蘚類、苔類よりはるかに少ない。 (日本には約1,700種もの蘚苔類が生育していますが、その中でツノゴケ類は全17種と言われています。)
ツノゴケなど。

スギゴケ

スギゴケ 杉苔は日本庭園には昔から最も多く利用されてきたコケです。杉の葉のように見えることが名前の由来です。
ウマスギゴケ,オオスギゴケ,コスギゴケ,タチゴケなどスギゴケ科に属するコケは日本に約30種あるそうですが、一般的に造園で利用されているのはウマスギゴケとオオスギゴケがスギゴケとして扱われています。
(ウマスギゴケとオオスギゴケは、専門家でないと判別しにくいほど似ていて、さくと呼ばれる胞子体の先端にある胞子が入っている部分の形と葉の横断切片の違いくらいで、性質もよく似ています。オオスギゴケの方がウマスギゴケより若干半日陰の少し乾きぎみのところを好むようです。)

スギゴケは栽培されていて入手も容易なため使いやすい品種です。スギゴケは芝生にくらべ、冬も枯れずに緑を保っているということ,病虫害で枯れることもないこと,施肥の必要もないこと,年中何回も芝刈りをする必要もないことなど、生育環境が適していれば維持管理は楽な地被植物です。しかしながら、芝生ほど乾燥に強くなく、環境が合わなければ、植えた当初は調子が良さそうに見えても次第に絶えてしまうデリケートな地被植物でもあります。


スギコケの生え方は、茎が枝分かれせず直立して、黄緑~濃い緑色の細めの葉がその周りに厚く並び、湿度が高い環境下では葉を広げていますが、乾いてくると身を守るために茎にくっつくようすぼまります。 成長すると、背の高さが5~20㎝位になります。
スギコケの生育環境を整えるのには、適当な日照と保水性のある土、しかも地表面の水はけが必要です。一般的にコケと言うと、日陰でジメジメした所に生えているイメージがありますが、スギゴケは根から養分や水分をとらず、空気中の水分を葉から吸収して光合成で自分の体に必要とする養分をつくりあげ、生育するため、建物や木陰などで日光や夜露が当たらなかったり、風通しがよすぎて乾燥しやすい所では生育しにくく衰退していきます。
スギコケを植えたい場所がスギコケにとって適切な環境とは限らないので、環境が合わなければ、よほどしっかりした管理でカバーしなければなりません。
樹木が密集していて木陰で日が当たり難い場合には、樹木の数や枝数を少なくして日照量を確保し、乾燥ぎみの所では保水性のある土と十分な水やりをし、逆に地面が湿けすぎていると、ゼニゴケなどの嫌な苔がはえてくるので、排水性のよい土にするなどの対策が必要です。


植栽方法
一般的に苔に適した下地の土質は火山灰,海砂,砂利以外であれば、赤土,黒土,山土,真砂土等が使用可能です。(スナゴケは川砂も使用可能です)乾き過ぎず保水力があり、さらに水捌けのよい土が理想的です。植栽時期は四季を通して選ばず、年中植え付け可能ですが、湿度が高くなる梅雨入り前の春時がお勧めです。肥料も必要ありません。水はけの良い土で下地が整えば、水を充分まき、ドロドロの泥土状にして、シート状の苔を押し付けるようにして貼りつけます。その後良く地面と接着するように、地ゴテ,木ゴテ等で苔の上から充分たたいて貼りつけて下さい。
灌水(かんすい・水やり)
苔を貼りつけた後の3か月間は充分に灌水して下さい。特に夏場は乾燥しやすいので、雨天の日以外は朝・夕の2回ぐらい灌水してください。(暑い日の強い日差しが当たる時に水やりをすると、葉焼けや蒸れの原因になるので要注意!)
苔が定着した後の灌水は季節や苔を植えた場所の環境によって頻度を調整します。土壌の保水性が悪かったり、風通しがよすぎて乾燥しやすかったり、夜露が当たらないところでは、湿度をある程度保つための補完として十分に水やりをします。 逆に、もともと湿気り気味の場所で必要以上に灌水すると、ハイゴケやゼニゴケなどの他の苔に侵蝕されてしまいます。
除草
スギゴケを植えて一~二年はとくに雑草が生えやすいので、雑草が大きくならないうちに、なるべく早く根元からぬきとっておく必要があります。(ある程度コロニーが出来上がってくると、雑草の種が飛んできても発芽する余地がなくなるので生えづらくなります。)
苔に生えてくる雑草などの管理ですが、苔は除草剤に弱いので基本的には鎌や手で除草作業を行って下さい。(昔はグラモキソンという除草剤が市販されており比較的楽に除草することができたのですが、現在は販売中止となっています。地苔にはそれに代わるものとしてプリグロックスが有効なのですが、オオスギゴケは除草剤に弱いので一本一本手で抜くしかありません。)又、ゼニゴケなどが生えた場合は食酢を塗り付けるか、ゼニゴケの周りの用土ごと取り除き、新しい苔を植栽し直して下さい。
刈り込み
オオスギゴケ(ウマスギゴケ)は日照や湿度条件によって、放っておくとどんどん伸びるのですが、美しく見せるためには5㎝位までの背の高さが最適です。長過ぎると、苔が倒れたり、茎が密集し過ぎて、下の方にあるものは、蒸れて枯れてしまいます。スギゴケが伸び過ぎた場合は、三~五月(桜の花が咲く頃を目安にして)に地面スレスレの所にハサミをいれてください。秋の終わり頃になって、あわてて切ると、春過ぎまで苔が生えずに景観を損ねますから、次の年の春まで切り取らずに気長に待ってください。
また、刈り取ってでた苔くずをまき苔すれば、刈り取った苔で新芽を出させて世代交代することができます。
寺社でホソバオキナゴケなど他の種類の苔と共生している場合は、調和がとれるように適宜短く刈ったりするようです。
病害
苔は害虫に葉を食害されることはありませんので、殺虫剤の必要はありませんが、部分的に赤茶色に枯れていることがあります。これにはカビなどの細菌によるものと犬,猫,鳥等の糞や尿、又は肥料中の尿素によるものとの二つの原因が考えられます。 (カビが原因の場合は、直径2~10㎝の円形の赤い枯れがあちこちに散らばっていることが多く、直径15㎝位の円形で一本残らず枯れている場合は、小動物の尿素によるものと考えられます。)カビによって傷んだ場合は細菌を殺すために消毒をします。薬は殺菌剤のベンレート,ダイセン,ジマンダイセンなどを使用します。傷んで赤茶色をした苔は約半年程度で回復しますが、新しい苔を植栽し直した方が早く景観を回復出来ます。 又、細菌とは違い、犬,猫,鳥等の糞や尿による枯死は回復には一年ほどかかりますので、完全に枯れる前に水で洗い流して薄めることが一番よいのですが、時間が経った場合は根まで枯れているので、枯れた周辺を掘りおこして植栽し直すことをお勧めします。
霜害
冬期は霜柱や土の凍結で霜害がひどく、土が持ち上がったりすると、コケが浮いたじょうたいになり、これに乾燥が加わったりすると、すぐ土からはずれてしまうことも起こります。この場合には敷き松葉やカヤをコケの上に並べて、保温します。

スギゴケを植えた場所が建物や木の陰などで日照条件や湿度条件が合わず、絶えてしまうところでは、よりその場に適した苔を植えます。



コケの特性


区 分樹 種日 照耐乾性高 さ備 考
蘚類スナゴケ日向強い直立
ウマスギゴケ日向~明るい半日陰普通直立
オオスギゴケ日向~半日陰普通直立
タチゴケ半日陰~日陰強い直立
コスギゴケ半日陰普通直立
ホソウリゴケ明るい半日陰~半日陰直立
カモジゴケ半日陰普通直立
ハイゴケ半日陰普通ほふく
ヒノキゴケ日陰弱い直立
アラハシラガゴケ~日陰弱い直立
ホソバオキナゴケ(ヤマゴケ)半日蔭~日陰強い直立
コツボゴケ半日陰~日陰弱い
 
苔類ゼニゴケ半日陰弱いほふく
 

【 関連写真 】

苔庭 苔庭 白砂と苔 苔庭 苔庭 苔庭 苔庭 苔庭 六角形灯籠 露地の苔

シダ植物

シダ植物 シダ植物

シダ植物はコケ植物と同じく、種子植物とは違って配偶体,胞子体で生殖,繁殖を行います。 コケ植物との違いは、種子植物のように体の本体に維管束いかんそくと言う繊維管(根から水や養分を取り込む器官)があることです。

日本庭園ではコケ類は主に地被植物として使われますが、シダ類は葉の形を観賞する下草として植えられることが多い。

山菜として利用されるワラビ,ゼンマイ,こごみ(クサソテツ)やトクサ科のツクシ(スギナ)もシダ植物です。

シダ類の生え方には二つの型があります。
一つは、地下を長く横にはっている根茎という茎があり、これから葉が一枚一枚出てくるのです。ホシダ,ワラビその他がこのような生え方です。根茎が地下に入らずに、地表面に出ているものもあり、マメヅタやヒトツバはこのような例です。根茎が長くはうものでは、葉が集まって出ることがなく、ある程度の間隔をおいて出ます。
いま一つの型は、クサソテツとかクマワラビ,イソデ,オシダなどの例で、根茎は横にはわず、短くて塊状になっています。

シダ類は多年生で常緑と落葉とがある。
常緑シダはクラマゴケ,タマシダ,リョウメンシダ,イワヒバ,ヒトツバランがある。
落葉はクサソテツ,クジャクシダ,シノブ,ゼンマイがある。

【 関連写真 】

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