配植の手法

植栽をするうえで先ず一番大切なのは、庭木は本来生物であり、生長変化するものであるから、施工にあてっては生態的なことも配慮し、調和面からも管理面からも充分考慮する必要があります。

単植と寄植え

石組みと同じように、樹木もそれぞれ気勢があり、それは各樹種の性質や生育環境の違いから生まれるもので、それぞれ異なった樹冠や方向性をもっています。
配植の手法は、「単植」と「寄植え」に分けられます。

松

単植とは、1本の樹木を独立して植えることであり、ほかの樹木より注目を集めるため見栄えのよい樹木が用いられます。
寄植えとは、複数の樹木を調和よく植えることです。

樹木には表と裏があり、植栽する際の樹木の方向はこれによって決めます。
日射を受けて育ち、葉が多く茂った側を「葉表」、その反対側を「葉裏」といい、葉表側を正面に向けて植栽するのが一般的です。
しかし、葉は日射を受ければ時間の経過とともに茂りますが、樹幹や太い枝の形状は、植栽後何年経っても変化することはありません。 日射条件による葉の付き方とは関係なく、樹幹や枝が伸長するために起こる「幹表」・「幹裏」を重視して植栽することもあります。


樹木の方向と傾きは、立ち入れを行う際に決めますが、複数の樹木を植える場合には、幹反りを合わせるうえで以下のような点に注意する必要があります。

① できるだけ「あや」をつくらない
 「あや」とは、樹木の幹と幹がX字形に交差して見えることで、植栽する樹木の本数が多い場合には、ある程度のあやができるのはやむを得ない。
② 「噛み合い」を避ける
 2本の同じくらいの大きさの樹木の枝が、互いにぶつかり合ったり、枝が伸長したときにぶつかりそうになっていることを「噛み合い」といいます。
③ 「つっかい棒」をつくらない
 「つっかい棒」とは、大木の根元や周辺に植えた樹高の低い樹木が、高木の枝などに触れることをいいます。

寄植えの手法

庭全体の気勢のもととなるものを「重点」といいます。庭の重点となるのは、樹木だけでなく、滝や流れ、池、蹲踞、石燈篭などがある庭にも重点があり、そこから生まれる気勢があります。
造園では、植栽の重点になる樹木を「心木真木)」といいます。

華道では、生け花を構成する3本の役枝を「真・副(添)・体(控)」や「天・地・人」といい、「真」は中心となる直立した枝を指し、「副」がそれを助け、「体」は下部に置かれ、「真」、「副」の上方に向かう力との均衡を図る役割をするとされ、 これら3本の役枝が平面、立面ともに、不等辺三角形を描くようにすると落ち着きがよいとされています。
この役枝の関係性は造園においても同様であり、重点となる樹木を中心に、樹木の高さ、位置などを不等辺三角形を描くように配置します。
庭は複数の寄植えが集まったより大きな単位の寄植えで構成されているようにします。

また、この「真・副・体」の関係は樹木同士だけでなく、「1木1草」・「1木1石」という組み合わせのように、樹木と景石、樹木と蹲踞・石燈篭などの景物などとの関係にも当てはまりますので、 総合的にバランスと取りながらレイアウトすることが重要です。

役木

庭の要所にあって、景趣を強調したり、他の物と調和させたり、景を添えたり、危険を防止するなどの役割をもった「役木」という配植法があります。

門冠りの木
門に添えて植えられるもので、樹形は冠り形のものを用います。
松,マキなどが適してます。
正真木しょうしんぼく
築山庭の主木に植えられる樹木です。
松,マキ,モチノキ,モッコク,ヒノキ,イヌツゲ,アカガシなどが用いられます。
景養木けいようぼく
池の中島などに、正真木の景を補うために植える木で、正真木と対比した美しさを出します。
ゴヨウ松,イブキ,イヌツゲ,キャラボク,モチノキなどが用いられます。
見越松
正真木の後方にあり、前景を引き立たせるように植えます。垣根の縁などに植えます。
松,カシ,梅などが多く用いられます。
寂然木
南庭では、東の部分に植えられます。
葉の美しい常緑樹、松,ツガ,杉,モッコクなどが用いられます。
夕陽木
南庭の西の部分に植えられます。
花木類、広葉樹を主とし、カエデ,桜,梅などが用いられます。
滝障りの木
滝口や、滝の正面にかけて植え、滝の水をあらわに見せないように植える木です。
常緑樹のほかに、モミジなどが用いられます。
流枝松
池畔に植えられ、水面に向かって斜めに枝を伸ばし、水と地表とのつながりをつけるために植えられる木です。
松,マキ,ハイビャクシン,キャラボクなどが用いられます。
池際の木
池畔の景を引き立てるように植えられる木です。
ツツジ,マメツゲなどの低木類が用いられます。
橋本の木
橋に景を添える木で、橋挾石に近く植えます。枝葉が橋上にさしでて、水面に影を落とします。
主に、ヤナギ,カエデなどが用いられます。
燈籠控えの木
石燈籠の後ろや脇などに植える木で、燈籠を引き立てるために植えられます。
松,シイ,モチノキ,モッコク,マキ,イヌツゲ,カヤなどの常緑樹が用いられます。
燈障りの木
石燈籠の近くに植え、夜間に細い枝が火袋にかかって風にゆらぐさまは趣があります。
カエデ,ウメモドキ,ニシキギなどが用いられます。
鉢前の木
縁先手水鉢に添えて植えられる木です。
アセビ,ヒサカキ,ナンテン,ウメモドキ,ニシキギ,クロチク,キャラ,ヒメクチナシなどが用いられます。
庵添えの木
あずまやなどの庭の建造物に添えて植え、建物の木陰とする目的で植えられる木です。軒よりもやや高めにします。
松,カキ,クリなどが用いられます。
見付の木
茶庭では内腰掛待合の正面に、まっすぐで高い木を植えます。松などが用いられます。門からみて正面に植えられる、比較的大きい樹木のことをいいます。
イチョウ,カヤ,モッコクなどが用いられます。
見返りの木
門付近に植え、帰路に眺める木です。
カヤ,モチノキ,モッコク,イチョウなどが用いられます。

テーマ別配植

庭木を植えるにあたって、その木の個々の性質や生活形態をある程度理解しておくことによって、庭の環境や機能・デザイン・演出などに合わせた植栽が可能になり、また無理なく生育することができます。

紅葉 紅葉 花 花
常緑樹
常緑樹は一般的に、主木としたり敷地の境界に沿って植栽され背景としたり、隣地との目隠しなどとして用いられる。
ヤマモモ,モチ,モッコク,樫,楠,椿,サザンカ,など。
落葉樹
落葉樹は一般的に、暑い季節に緑陰となり冬場日当たりをよくしたい時や、新緑・花・紅葉・落葉といった四季の変化を引き立たせるのに用いられる。
紅葉,イチョウ,梅,花水木,ウメモドキ,ドウダンツツジ,など。
紅葉の木
四季の変化を引き立たせ、季節感を演出する。
カエデ,ドウダンツツジ,花水木,など。
黄葉の木
四季の変化を引き立たせ、季節感を演出する。
イチョウ,ケヤキ,柘榴,サルスベリ,カエデ,など。
花の咲く木(赤)
四季の変化を引き立たせ、季節感を演出する。
サザンカ,椿,花水木,サルスベリ,ツツジ,など。
花の咲く木(白)
四季の変化を引き立たせ、季節感を演出する。
サザンカ,椿,梅,サルスベリ,ドウダンツツジ,など。
花の咲く木(黄)
四季の変化を引き立たせ、季節感を演出する。
金木犀,など。
果実の木
食することのできる実をつける木。
蜜柑,枇杷,ヤマモモ,カリン,ザクロ,梅,柿,杏,など。
実のなる木(観賞用)
観賞や野鳥類の餌となる実のなる樹。なお、雌雄異種の樹木の場合は、雌木でなければ実をつけない。
南天,紫式部,ピラカンサ,千両,万両,アリドオシ,藪柑子,クロガネモチ,花水木,など。
香りの木(花)
芳香花木。咲いた花に良い香りをもっている樹種。視覚だけでなく、嗅覚によって季節感を演出する。
金木犀,沈丁花,ツワブキ,クチナシ,サザンカ,ヒイラギ,など。
香りの木(茎や葉)

柑橘類,楠,月桂樹,山椒,黒文字,など。
トゲの木
防犯
金柑,薔薇,など。
遮蔽・遮断植栽
施設を隠したり、見せたくない場所などへの視線や視界を遮断する目的で行われる植栽で、枝葉が密である常緑樹が適している。
貝塚伊吹,サンゴジュ,ヒイラギモクセイ,など。
緑陰植栽
日射を遮り、減暑効果を高める役割をもつ植栽。夏の緑陰だけを考えるならば、常緑樹でもよいが、冬季の日当たりを確保したい場合は落葉樹の方が適している。
ケヤキ,など。
防風植栽
季節風などの強風や寒風の影響を和らげる目的で行われる植栽で、深根性で強風にも抵抗力がある樹種が適している。また、海岸に近い地域では、耐潮性をもつ樹木が選択の大きな条件となる。
松,杉,シラカシ,など。
防火植栽
飛び火や輻射熱などで隣家からの延焼をくい止める目的で行われる植栽で、枝葉が密生し、葉が多肉質で水分を多く含んでいる常緑樹が適している。
サンゴジュ,ユズリハ,シイ,モッコク,カシ類,など。
縁起かつぎの木
古来より庭園内に植えておくと幸福をもたらすと言い伝えられている樹木のこと。
マツ・タケ・ウメ(不老長寿を願う吉樹),ナンテン(難を転じる),ヒイラギ,ヒイラギナンテン(鬼門除木),ザクロ(豊穣多産),センリョウ・マンリョウ・アリドオシ(千両万両有通し),カリン・カシ(お金を借りん、外に貸し),など。
陽樹
日当たりのよい場所でしか生育できない樹種、または日当たりのよい場所で生育良好な樹種。
松,貝塚伊吹,スギ,シラカバ,ハイビャクシン,など。
陰樹
日陰または半日陰に於いて生育良好な樹種、または陰地に耐えて生育できる樹木。
アスナロ,イチイ,サザンカ,ツバキ,アオキ,ヒイラギナンテン,ヤツデ,など。
乾燥地に強い木
乾燥した地に耐えて生育する樹種。
松,モミ,シラカバ,ソテツ,など。
湿潤地に強い木
湿潤地に耐えて生育する樹種。
スギ,ラカンマキ,イヌマキ,カヤ,サワラ,アオキ,シダレヤナギ,ポプラ,クヌギ,コナラ,など。
成長の早い樹木
早期に大きく生育させたい場合などに用いられる。
ケヤキ,サクラ,ポプラ,など。
成長の遅い樹木
植栽時から樹形があまり変化しないようにしたい場合や、剪定などの管理をできるだけせずに景観を保ちたい場合に用いられる。
ラカンマキ,イヌツゲ,ウメ,など。
大気汚染に強い樹木
工場や自動車の排煙、排気ガスなどの大気汚染に対し、比較的強い樹木。
貝塚伊吹,ウバメガシ,イチョウ,エンジュ,シダレヤナギ,など。
大気汚染に弱い樹木
工場や自動車の排煙、排気ガスなどの大気汚染に対し、弱い樹木。
アカマツ,杉,ウメ,サクラ,モモ,カエデ,など。
More ≫ 本サイト内の『庭 木 』中の主な庭木の特性の項目を御参照して下さい。
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