庭石

岩石の種類

庭石の本となる岩石は、地質学上ではその生成過程により大きく3つに分類され、主要構成鉱物の違いによりそれぞれ名称がつけられています。

岩石の生成過程による分類

岩石の種類
分 類岩石名備 考(石材名)
火成岩深成岩花崗岩本御影石,白川みかげ石など
閃緑岩鞍馬石,甲州鞍馬石など
斑糲岩
橄欖岩
火山岩安山岩根府川石,鉄平石など
玄武岩六方石など
流紋岩
半深成岩石英斑岩
ひん岩
堆積岩砂岩多胡石など
石灰岩紫雲石,琉球石灰岩など
凝灰岩大谷石など
変成岩結晶片岩伊予青石など
片麻岩
大理石寒水石,秋吉大理石など
蛇紋岩蛇紋石など
粘板岩瀬田石,玄昌石など
珪岩
火成岩
火成岩は珪酸塩の溶融物であるマグマが地中や地表で冷却固化し結晶化したものです。火成岩はその生成状態によって、さらに深成岩・火山岩・半深成岩にわけられます。
深成岩はマグマが地下の深い所で、高圧によって徐々に冷却固結したもので、岩石全体が結晶質であり大塊となる。
火山岩はマグマが地球表面に噴出して急激に冷却固結したもので、半昌質または、ガラス質の斑状のものが多い。
半深成岩は深成岩と火山岩の中間のもので全体が結晶質であるが、均一な結晶でない。
堆積岩
堆積岩は、水の流れ,波あるいは風によって岩や土壌,有機体などが沈降・堆積して生成したものです。
変成岩
変成岩は、火成岩や堆積岩が火山活動や地殻の変動で、地熱や圧力の作用によって変化し、安定化した状態すなわち再結晶化したものです。

庭石の分類

採石地本位による分類

庭石の本となる岩石は、必ずしも初めに生成された場所にいつまでも固着しているわけでもなく、地殻の変動や地震,山崩れや水流などにより移動し、その過程で破壊や浸食があり形状も変わっていくこともあり、採石地によって大きく3つに分けられます。

山石
山石とは山地の表面または地中から採石されるもので、一般的には角ばったものが多い。
生駒石,木曽石,筑波石,鳥海山石など。
川石(沢石・河石)
山地から豪雨,山崩れなどによって落ち込んだ岩石が水流の力によって押し流されて移動しているため、角がとれているのもが多い。
沢石は川の上流域付近から産する石をいい、水流によって適度に角がとれているのもが多い。
河石は川の中流から下流域にかけて産する石で、丸く表面が滑らかになっているのもが多い。
貴船石,吉野川石,揖斐川石,秩父石など。
海石
河からさらに海に運ばれるか、海辺近いところの岩盤がくずれて海中に入ったもので、ともに海波に洗われているもの。
貝殻が付着していたり、波によって侵食をうけていたりするのもが多い。
伊豆海石など。

用途本位による分類

庭石には、美観本位に用いられるものと、定まった用途があってその位置に用いられるものがあり、用途により景石,飛石・敷石,積み石などに大別できます。
特定の位置に置かれ一定の役割をもって使われる石を総称して役石といい、特に茶庭においては、様々なものがあります。
景石に属するものとしては、組み石,捨石,飾り石などがあります。
飛石・敷石に属するものとしては、飛石,沓脱石,二番石,縁石,踏分石、延段石,畳石,階段石などがあります。
積み石に属するものとしては、根石,笠石などがあります。

形による景石の分類

立石
据えたときに横幅より高さのほうが高い石。
横石
高さよりも横幅のほうが広く、しかもある程度の高さがある石。
伏石
横石よりもさらに低い石で、地面に伏しているような形になる石。
山形石
据えたときに全体の形が山の形になる石。
平天石
上部が平らになっている石の総称。
平石
平天石の一種で、特に地面に低く据えられる石。(薄い平天石)

粒状石材の大きさによる分類

造園用語では一般的に、1立方尺(0.0278㎥)以下の粒状石材はその大きさによって、玉石,ごろた石,砂利,砂に分類して呼んでいます。

玉石
川床から採取された、直径15~30㎝くらいの角がとれ丸みをもった自然石。
ごろた石
直径5~15㎝程度の石。
栗石
ごろた石よりも小さく、砂利よりも大きい石。角ばった割石は「割栗石」といわれる。
砂利
粒径1~5㎝程度の小粒状なった石。
岩石が風化などの自然作用を受けてごく小さな粒状なったもの。

庭石の種類

庭石の種類

庭石には、産出地や岩質の特徴などによって造園上の名称があります。
(なお、地方により同じ石を指していても呼び名が違うこともあります。)

主な庭石の種類
産地名称石質色調主な用途
北海道日高石結晶片岩赤・緑景石・石積みなど
神居古潭石結晶片岩黒紫・黒緑景石・石積みなど
山形県鳥海石安山岩灰褐色景石など
福島県鮫川石結晶片岩青黒景石・石積みなど
茨城県筑波石花崗岩・斑糲岩灰色景石・石積みなど
群馬県三波石結晶片岩緑・赤など多色景石・石積みなど
埼玉県秩父石結晶片岩緑・赤など多色景石・石積みなど
山梨県甲州鞍馬石閃緑岩沓脱石・飛石など
神奈川県根府川石安山岩茶褐色沓脱石・飛石など
静岡県伊豆六方石玄武岩灰褐色乱杭など
天龍石結晶片岩景石・石積みなど
長野県鉄平石安山岩貼石・飛石など
石川県滝石花崗岩景石など
岐阜県木曾石花崗岩黄褐色石積み・沓脱石・飛石など
揖斐川石結晶片岩緑・紫など多色景石・石積みなど
三重県伊勢御影花崗岩石積み・飛石など
滋賀県瀬田石粘板岩景石など
京都府鞍馬石閃緑岩沓脱石・飛石など
貴船石結晶片岩緑・紫など多色景石など
加茂川石(変成岩)赤・黒など多色景石など
白川石花崗岩石造品など
丹波鞍馬石花崗岩沓脱石・飛石など
兵庫県本御影石花崗岩石造品など
丹波石安山岩乳灰色張石・飛石など
奈良県生駒石花崗岩・斑糲岩灰色景石・石積みなど
吉野川石結晶片岩緑・紫など多色景石など
和歌山県紀州青石結晶片岩景石・石積みなど
鳥取県佐治石(変成岩)黒青景石など
徳島県阿波青石結晶片岩景石・石積みなど
愛媛県伊予青石結晶片岩景石・石積みなど
長崎県肥前全六方石玄武岩灰褐色景石など
大分県紫雲石石灰岩紫など多色景石・石積みなど
宮崎県椎葉石結晶片岩緑・紫など多色景石・石積みなど
沖縄県琉球石灰石石灰岩乳白色景石・石積みなど
※上記は代表的な庭石ですが、現在では採掘禁止などで入手困難になっている石も多い。

庭石の名称には、地名を冠した呼称が一般的ですが、産地と色彩による呼称(伊予青石,佐渡赤玉石,瀬田真黒石など)や、物にたとえた名称(虎石,亀甲石,菊花石,鎧石など)、形状による名称(玉石,六方石,ヘゲ石,油石など)が慣用語として使われることもあります。

庭石に関する用語

砕石
硬質の岩石を機械で小さく破砕し、粒度分級した石材。
切石
人工的に石を直線状に加工したもの。
景石
一石または数個の形姿のよい自然石を据えて庭園の景観を深めるために用いる石。
沓脱石
建物に出入りする時に、履物をそろえて脱いでおくための石。茶席の躙口に用いられるものは「踏石」といいます。
飛石
茶庭から使い始められた、歩行のために園路にほぼ等間隔に据えられた上面が平らな石。
二番石
沓脱石の前に一段低く据えられた、飛石とのつなぎにつかわれる石。
踏分け石
飛石の一種で、飛石が二つに分かれる部分に打つ石で、他の飛石より大ぶりなものを用いるのが普通。

庭石の価格

庭石の価格は一般的には、石種,大きさ,重さ,用途(形),希少価値,加工の程度などによってかわります。
一般的に形姿のよい景石は1基当り、石組用の庭石は屯当りの単位で取引されています。
灯篭などの石材の規格は尺(30.3㎝)の基準が通用し、石材原石の価格は1立方尺(1才または1切と呼ばれています)当りの単位で取引されています。

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