露地とは草庵式の茶庭の別称で、もともとは“雨露のかかるところ”,“覆いのないところ”の意ですが、仏教用語では“煩悩、束縛を脱却した境地”を意味します。
世俗の塵埃を離れ、清浄無垢の境地に至ることを理想とした茶の湯と、その実践の場所である茶室。
露地はその茶室への通路という機能だけに留まらず、精神的に準備をする場所であり、一期一会の主、客の交わりへの導入部でもあります。
茶庭の考え方の基本は、禅茶一味を反映して、厳然たる自然の中で、悟りの境地を得る、という環境づくりが、茶湯の場に求められるようになって茶事を行う空間に生かされました。
茶庭は幽邃な境地を好み、茶人は侘びの精神から華やかなものは好みません。
一般的に、茶庭には花の咲く木や香りの高いものは用いません。 これは茶室の内で花を用い、香りを生かして使うからです。
茶室には四畳半を目安にそれ以下を小間、それ以上を広間とし、小間は「草庵」、広間は「書院」とも呼びます。
このような 「草庵」 と 「書院」 という座敷の広さによる茶趣の違いは、庭にも反映され、草庵の露地が座敷に入るまでの、道すがらであるのに対して、
書院の露地は、大庭園の一部に茶の座敷を拵え、その付近を露地風にしたものと、書院としての広間の座敷の前庭を、露地意匠にしたものとの二種類があります。
草庵の露地が、実用と鑑賞、すなわち用と美の意匠と目的を秘めているのに対して、書院の露地は、用を第一義とせず、鑑賞を主体として構成されています。そのために、内外露地などもなく、一般の庭園に、露地の味付けをしたようなものになっています。
正式な露地は、露地門側の外露地と茶室側の内露地からなり、
その間に中潜と呼ばれる中門(簡素な枝折戸にすることもある)があります。
外露地には、寄付,下腹雪隠,外腰掛待合があります。
内露地には内腰掛,砂雪隠,蹲踞,茶席が設置されます。この形式を二重露地といいます。
また露地を内、外に区別しない一重露地や、三重露地という特殊な露地もあります。
茶事では、亭主は客の到来を見計らい、あらかじめ水を打って露地を清めます。茶事に招かれた客は、座敷の寄付(控えの間)で着替え、亭主方の案内を受けて外露地の「腰掛待合(外腰掛)」で待機します。
合図により苑路を進み、中門へ向かうと、そこで亭主が客を迎えます(これを『迎付け』といいます)。
露地では、苑路が長い山道をイメージして曲線状に造られ、そこに歩行者を導く飛石が打たれます。飛石ひとつひとつが山里を進み、峠を越える思いを表しています。
内露地に入り、客は「蹲踞」で手を清め口をそそぎ、「躙口」から茶室に入ります(『席入り』といいます)。
茶室のなかでは、床の間(掛物)の拝見、主客の挨拶、炭点前や懐石料理の振る舞いの後、最後にお菓子をいただきます。
茶事は初入り(初座)と後入り(後座)に大別され、その中間で客はいったん茶室を出て(『中立ち』といいます)、内露地にある内腰掛で待ちます。
内腰掛では、再び亭主の迎付けや銅鑼の音の合図で席入りをします。
後座では床の間の掛物が花に替わり、いよいよ茶事の主眼である「濃茶」となります。
濃茶の後は、炭点前、薄茶と続き、最後に亭主の見送りを受けて退席する。亭主は客の姿が見えなくなるまで躙口から見送ります。これを「残心」といいます。客は露地を通って寄付に戻り、この日の茶事が終わります。